NOON裁判、第七回公判傍聴レポート by DJ MIZUTA

NOON裁判、第七回公判傍聴レポート by DJ MIZUTA


10月1日に始まったNOON裁判も今回で7回目の公判。これまでに18人にも及ぶ証人が出廷する大規模裁判となりました。そして今回は、いよいよNOON元オーナー、金光さんに対する被告人質問です。

弁護側からは、金光さんが音楽業界に関わるようになったきっかけや、これまでに関わってきたクラブについて、そして経営方針に関する質問がありました。初めて買ったレコードはThe Beatles「With The Beatles」で、John Lennonの歌声に感動した。初めて経営した「パラダイス」から「ダイナマイト」「ズール」、そして「アンテナ」のブッキング担当を経て「NOON」の 前身「DaWN」をオープンした経緯等が、順を追って説明されました。

「DaWN」と「NOON」の基本コンセプトは、

①本物を提供する
②新しいものを提供する
③楽しい場をつくる

「本物」とは、「流行に迎合しない普遍的な音楽」との説明もありました。「新しいもの」については「ゼロから1を生み出す新しさは稀。既存の物同士を合わせる事によって生まれる新しさに注目していた」。その発想のルーツとして、Aerosmithのロックにラップを組み合わせた Run D.M.C.”Walk This Way”が挙げられました。

また「楽しい場を作る」ために、店舗内の安心と安全を重視し、スタッフに「我が家にお客さんを招き入れるような対応をしなさい」と教育していたとの事。イベントをレギュラー化させ、常連客によるコミュニティが出来易いようにも工夫したそうです。オープン当初は近隣から騒音に対する 苦情もあったとか。そこで保健所からデシベル測定器を借り、防音工事と測定、近隣への謝罪、ヒアリングを何度も何度も繰り返し、結果的に騒音の苦情がなくなった事も話されました。

検察側からは、主に金光さんが風営法違反に対する自覚の有無についての質問が続きました。「NOONに警察の立ち入り検査が入った時、警察官は何と言いましたか?」。 金光さん「同業者のチンコロ(密告)や、と言われました」。「その時、自分の店が風営法違反に該当するか心配になりませんでしたか」という質問に対しては「警察に無理やり風俗営業とみなされたらどうしようと思いました」との答えがありました。また「クラブには悪いイメージがあると思うか?」という質問に対しては「20年前であればそうだったかもしれないが、今は良いイメージのクラブと、悪いイメージの店に分かれてきていると思う」と。検察側はどうしても「クラブは悪い所」と言わせたかったようですが、金光さんは続けて「僕が言う”悪い”というのは、罪に問われるような事を指すのではなく、ナンパする所だとか、ダサイ店を指している」と、風営法とは違う次元での経営論を述べました。「客を着席させるスタイルでは問題があるのか?」という質問もありました。クラブを知る者にとっては少し驚いてしまう質問ですが、そこも金光さんは「NOONは回遊性を重視していた。座って喋ったり、フロアで音楽を聴いたり、好きなように過ごせるようにしていた」と、冷静に答えていました。

また、金光さんからは「摘発後に曽根崎警察に行き、どうすれば摘発されずに遵法営業できるのかを聞きに行った」との証言もありました。警察官からは「風営法の条文を読んでほしい。読んであなたが自分で理解してほしい」との返事しか無かったそうです。そして「読んだが、全く理解できなかった」とも話していました。警察に行った理由として 「風俗営業という言葉のイメージがものすごく悪いし、勝手にそういうレッテルを貼られたくない。そのためにどうすればいいのかを聞きたかった」を挙げられました。

裁判官からは、DaWN、NOONでのレギュラー・イベントの名前をを具体的に挙げて欲しいとの要望がありました。ここで金光さんは、Public Cafe、Freedom Time、喜怒哀楽、World Standard、British Ppavilionの名前を挙げました。また、ブッキングするDJの基準や、イベント企画時における経営者の担当範囲についての質問もありました。DJを選ぶ基準については、他のクラブ等に出向いてチェックする事はもちろん、音楽の知識のみならず、その歴史的背景やファッションとの関連を含めた幅広い視野を持っている事を挙げ、「それだけ凄いDJを選んでいるのだから、彼らに選曲やイベントの内容について意見する事は基本的にない」と仰っていました。自分(DJ MIzuta)がプレイしていたイベントの名前が挙がったからというのもありますが、こういう金光さんの冷静で優しい部分に、僕達DaWNやNOONの DJは支えられて活動してきたのだという事を裁判所の中で聞くというサプライズ。恥ずかしながら目頭が熱くなってしまいました。

法廷の中で、このようなクラブ論、音楽論が展開される事に違和感を感じる方もいらっしゃるでしょう。しかし考えてみてください。これまで日本の裁判所ではクラブ営業に関する裁判は殆ど無かった。ならば、クラブがどういう所なのか?まずはそこから話を始める必要があると思いませんか?

確か第二回公判、NOONのお客さんに対する証人尋問での場面だったと思います。DJによる選曲の話になった時に、裁判官が「DJがCDアルバムと違う曲順で音楽を掛けるのはそんなに楽しい事なのですか?」という主旨の質問があった事を強烈に覚えています。僕達のようなクラブ好きにとっては当たり前の事も、裁判所レベルでは全く知られていないのです。そういう意味で、今回の第七回公判で、裁判官から具体的なイベント運営についての 質問があった事は、とても意義のある事だったと思います。

あくまでクラブを風俗営業として捉えようとするのならば、女の子がセクシーなダンスを披露しやすい選曲で、男は(ある時は金に物を言わせて)ナンパに励む。そうしたお客さんの享楽性を最重視した店内の雰囲気は、経営者や店長の独断によって形成される、、、、という筋書きになるのかもしれま せんが、NOONの場合は、今回の証言でも分かるように全く違うのです。今回のやりとりが裁判所の記録に残る事は、クラブの歴史にとってとても大きな一歩だと思います。そして、NOONと同じように拘りを持ってクラブを経営しているオーナーは他にも沢山いるという事を僕達は知っています。

■NOON裁判、今後の日程
1月9日(木)午後1時10分〜5時(見込み)(論告弁論期日)
3月ごろ 判決言い渡し
場所:いずれも大阪地方裁判所704号法廷(変更される場合もあります)

※NOONのスタッフや金光さんに面識が無くても良いと思います。途中退出、途中入場もOK。風営法の事、DJの事、クラブの未来を考えた い人は、是非傍聴席へ!

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